健康な土のお話

たまねぎのべと病への有機的対処法

万能野菜タマネギを襲った大被害 −べと病への有機的対処法−

万能野菜タマネギの生まれと育ち

たまねぎのべと病への有機的対処法タマネギの歴史は人類の歴史とほぼ同じくらい古く、古代エジプトでは疲労回復や病気を防ぐ薬効のある作物として栽培され、ピラミッドを作る労働者たちが重労働に耐える強壮剤にもなっていたそうです。

タマネギの原産地は中央アジアで、乾燥した大陸性気候です。夏は暑く冬は非常に寒く、降水量は少なく年間を通して乾燥しています。

こんな気候条件で生まれ育ったタマネギは害虫や病原菌から身を守るためにさまざまな物質を身につけました。その代表がアリシンという硫化物です。

アリシンは玉ねぎを切ると発生する揮発性の化合物で、強い匂いと辛味を持ち、抗菌・抗ウイルス・抗酸化作用があることが知られています。これらの効果があるため、玉ねぎは古くから健康食品としても重宝されてきました。

たまねぎのべと病への有機的対処法

現代でもタマネギは、栄養豊富なこと、あらゆる調理法が可能なこと、そして何より長期保存がきくことで万能野菜として世界中で愛され広く栽培されています。

日本での歴史とべと病の発生

日本にタマネギが伝わったのは江戸時代ですが、本格的に栽培されるようになったのは明治時代に入ってから。今では北海道、佐賀県、兵庫県が大産地として栽培を担っています。

そんなタマネギの一大産地、佐賀と淡路島を襲ったのが、2016年に大発生した「タマネギべと病」です。これまで1.2%だった平均発病率が52.8%へと一気に跳ね上がり、記録的な不作となりました。

べと病は病原菌によって引き起こされるもので、玉ねぎの葉や球根にねばねばとした粘液状の物質がついて、腐敗や変色を引き起こす特徴があります。

農薬などによる化学的な防除方法が主に行われていますが、環境汚染や耐性菌の発現も報告されるなど持続的な栽培管理には適していないのが現状です。べと病の予防や防除には単一の対処ではなく、栽培環境を含めた多様な方法が必要とされます。

たまねぎのべと病への有機的対処法

必要な時間をかけて確実に改善させる有機的対処法

弊社ではべと病の大発生後、有機JAS適合資材での対処法のご相談を多くいただき、有機的な対処法による試験栽培をしてきました。

それが、微生物による土壌改良です。

微生物が土壌に馴染み元気良く広がっていくためには時間が必要なため、薬剤にくらべて即効性はありません。しかし年を重ねるごとに着実に健全な栽培環境を整えていくことができます。

中央アジア原産のタマネギは、もともと乾燥した環境が好みなので、水分を過剰に吸収したり風通しが悪いと病気にかかりやすくなる性質を持っています。

べと病の感染原因の多くは降雨による泥ハネです。湿度が高く密集して栽培したときや肥料が多すぎるとき、肥料の不足や実のつけ過ぎで株の生育が弱まったときなどに多発しやすいことがわかっています。

有機的な方法で試験栽培を始めて3年経過した現在、確実に良い結果が出てきています。

たまねぎのべと病への有機的対処法

べと病への有機的な対処法

1、発病株や残さの除去

越年罹病株は、発見次第抜き取り、袋などに入れて圃場の外に持ち出す。

2、苗床の消毒(8月)

太陽熱による土壌消毒を行う。

3、土壌を改良する(物理性、生物性の改善)

良質な堆肥や腐葉土などの有機物、善玉微生物豊富な土壌改良材(※1)や、病原菌に耐性を持つ微生物資材(※2)を投入して土壌の微生物を増やし多様化する。これにより水はけの良くなった土壌で、一定の病原菌が爆発しないバランスの良い微生物層を作る。

4、元気な株を育てる

べと病に限らず、病気を予防するには丈夫な株に育て根張りを良くしてやることがポイントです。アルム農材の発酵生薬で作る発根促進材は、特に毛細根の成長促進に顕著な効果があり、根張りが良く吸収力のある植物として元気な株に成長させることができます。(※3

5、適切に肥料を与える

肥料を多く与え過ぎると軟弱で病気にかかりやすい株に育ちます。反対に、肥料が不足すると全体に十分な栄養が行き渡らず健康な株に育たないので、肥料は量やタイミングに配慮し適切に与えましょう。

土壌微生物の多様性を保つためにも有機肥料がおすすめです。(※4

6、適切な栽培管理をおこなう

定植するときは間隔を空け、成長して葉が混み合った部分はカットし風通しを良くしておきましょう。農薬などを使用する場合は、有機微生物資材の施用は時期をずらして(1週間程度)行ってください。

農薬を使用する一般的な対処法は、病気の症状を治療することに重点を置いているため、根本的な原因を取り除くことができない場合があります。作物の特性に合った有機的な対処法を少しずつ増やし、環境にも人にも健全な栽培にしていくことが、豊かで持続可能な農業への道ではないでしょうか?

たまねぎのべと病への有機的対処法

(※1)善玉微生物豊富な土壌改良材:OKY-999(オーケーワイスリーナイン)

(※2)病原菌に耐性を持つ微生物:Dr.放線菌(ドクターホウセンキン)Dr.トリコ菌(ドクタートリコキン)

(※3)発根促進材:アルム純(ジュン)

発根促進&土壌改良材:アルム顆粒(カリュウ)

(※4)有機肥料:畑の美食(ハタケノビショク)

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